夢見た警察官の道で直面した「最初の壁」:女性が警察官になるって、こんなに大変だったの!?
小さい頃から、私の夢はただ一つ、警察官になることでした。テレビドラマや映画で見る、正義感に燃える警察官の姿に憧れ、いつか私もあの制服を着て、世の中の平和を守りたい!と、ずっと心に描き続けていました。
そして、いよいよその夢に手が届くかもしれない、警察官の採用試験を受ける日がやってきました。
しかし、その時、私は最初の大きな壁にぶち当たったのです。
夢の入り口で見た、まさかの「採用人数」の壁!
皆さん、警察官の採用人数って、ご存知ですか? 私は試験を受けるまで、全く気にしていませんでした。ところが、募集要項を見て、目を疑ったんです。
例えば、日本の首都を守る警視庁の令和6年度の採用予定人数を見てみましょう。
- 男性警察官:900名
- 女性警察官:400名
- 合計:1300名
(参照:令和6年度警視庁採用サイト https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/saiyo/2024/recruit/info-police.html)
男性警察官が900名に対して、女性警察官は半分以下の400名…。この数字を見て、「あれ?こんなに差があるの?」と素直に驚きました。
私が採用試験を受けた平成の半ば頃は、もっと衝撃的でした。私が受験したK県では、男性警察官が130名だったのに対し、女性警察官はたったの10名! その10名の枠を巡って、第一次試験の受験者は約130名もいたんです。単純計算で倍率はなんと13倍! (※当時の記憶に基づく情報ですので、ご参考までに)
「え、こんなに差があるの!?」と、その現実に愕然としました。もちろん、当時の倍率は男性も高かったですが、女性はなること自体が、とてつもないハードルだと痛感した瞬間でしたね。この「採用人数の違い」は、夢に向かって走り出したばかりの私にとって、女性であることに苦しささえ感じるほどの衝撃だったんです。まさに、夢の入り口で、いきなり目の前に分厚い壁が立ちはだかったような感覚でした。
警察学校での「男女の壁」:制服、成績、そして訓練の現実
なんとか最初の壁を乗り越え、晴れて警察学校に入校!と喜んだのも束の間、そこでも「男性」と「女性」の違いに次々と直面することになりました。
1. 意外と多い?「制服」の管理が大変!
まず驚いたのが、制服の違いです。まさか性別で貸与品の種類や数がこれほど変わるとは思ってもみませんでした。
- 男性とは素材の違う革靴(短靴)
- 女性警察官専用のスカート付き制服(男性にはもちろんありません)
- スカート着用時には指定のヒール付きパンプス(これも男性用とは大きく異なる点です)
- さらに、制服ベストまで!
...と、男性に比べて管理しなければならない貸与品の数が、とにかく多いんです! しかも、警察学校卒業後も、定期的に制服の数や管理状況を報告する義務があり、もし一つでも紛失すれば始末書(反省文)を書かなければなりません。これは、貸与品が多い分、男性よりも女性の方が、そのリスクが高いということ。制服を着て憧れの警察官になれる喜びの裏で、貸与品管理のルール一つにも、女性であるがゆえの「苦しさ」を強く感じました。たかが制服、されど制服。その細かな違いが、日々の業務に影響を与えることになるとは、当時は想像もしていませんでした。
2. 「女性警察官は優秀であれ」!?成績へのプレッシャー
警察学校では、教官から何度もこう言われました。
「女性警察官は成績が良く、優秀でなければならない」
採用試験の倍率を考えれば、確かにそういう側面もあるのかもしれませんが、これがかなりのプレッシャーでしたね。男性と同じ基準で評価される一方で、「女性」という枠の中で求められる期待値の高さに、常に緊張感を持っていました。
どんなに頑張っても、「女性だから」という目で見られていると感じることもあり、純粋な努力の評価ではないような、複雑な気持ちを抱えることもありました。
常に「完璧でなければ」という見えない重圧と戦う日々でした。
3. 体格差を無視!?訓練内容は「男性と一緒」
一番体感的に厳しかったのが、訓練の内容です。
男性と女性で体力や体格に差があるのは当然ですが、警察学校の訓練は、男女関係なく全く同じ。同じ距離を走り、同じ重さの盾を持ち上げ、同じ回数の腕立て伏せをこなす...。
体力差を考慮しない訓練は、正直言って過酷でした。男性と同じようにこなさなければならないというプレッシャーの中、体格や筋力の違いに苦しみながらも、必死で食らいついていくしかありませんでした。
まさに「男女平等」ならぬ「男女一緒」の洗礼を受けた日々でしたね。時には、限界を超えて努力しなければならないこともあり、心身ともに鍛えられました。
現場での「第3の壁」:理想と現実の間にあった「女性だから」の壁
警察学校を卒業し、いよいよ警察署に配属、念願の交番勤務となりました。交番を拠点に寝泊まりしながら、管轄内をバイクでパトロールし、地域の治安を守る…! まさに私が夢見た警察官の姿でした。
ところが、ここでも「女性」であるがゆえの壁にぶつかることになります。当時、交番には女性の就寝スペースがありませんでした。そのため、こんな指示を受けたんです。
「夜は女性には危ないから、交番ではなく、警察署の中で仕事をしなさい」
つまり、勤務時間の一部(18時~翌7時頃)は、憧れの交番勤務ではなく、警察署内で事務仕事をすることになったのです。もちろん、今は少しずつ女性用の休憩室が設置された交番が増えたり、女性警察官だけで勤務する交番ができたりと、改善は進んでいます。しかし、当時は女性警察官の配置自体がまだ少なかったため、環境が整っていなかったのが現実でした。
そして、私の12年間の警察官生活では、「女性だから危ない」「女性だから行ってはいけない」という理由で、思うように業務ができない、させてもらえないという出来事が非常に多かったのです。例えば、深夜の繁華街でのパトロールや、危険が伴う可能性のある現場への急行など、男性警察官と同じように動きたいのに、止められることがありました。
この「性別の差」は、私にとってはどうしても割り切れない部分でした。スポーツの世界のように、男女でカテゴリーを分けて考えることができればよかったのかもしれません。でも、警察官として「地域の安全を守る」という同じ目標に向かっているはずなのに、「女性だから」という理由で業務に制限がかかることは、私の理想とする警察官像とはかけ離れていました。
女性警察官を目指すあなたへ:知っておいてほしい「リアル」
警察官になれたことは、本当に嬉しく、誇らしいことでした。しかし、この「女性」という性別が、業務にこれほど大きな違いを生むとは、想像もしていませんでした。そして、その違いに深く苦悩したのも事実です。
私の経験は、あくまでも一例に過ぎません。時代とともに、女性警察官を取り巻く環境は確実に改善されています。しかし、それでも「性別の差」が完全に解消されたわけではありません。
もし今、警察官を目指している女性の方がいらっしゃるなら、ぜひ、こういった「リアル」な側面も知っておいていただきたいと思います。それは決して、夢を諦めてほしいという意味ではありません。むしろ、理想と現実のギャップを理解した上で、それでもなお「警察官になりたい!」という強い覚悟を持てるかどうか、改めて考えてみるきっかけになれば幸いです。
あなたの「正義感」が、本当に輝く場所はどこなのか。そして、警察官という仕事の中で、あなたの「女性であること」をどう活かし、どう乗り越えていくのか。この記事が、その答えを見つける一助となれば嬉しいです。